AI査定エンジンのブレイン谷口のキャリアと不動産に対する想い、今後目指したい世界について聞いてみた
「HowMa」の心臓部分である査定エンジンを作る谷口。
10年以上不動産業界に関わる谷口さんの「不動産脳」をプロダクトに昇華するために日々心がけていることは?
不動産業界を知り尽くす谷口が感じる「不動産業界の負」とは?
コラビットが目指す世界観をエンジニア視点ではなく、不動産業界出身者の視点から読み解きます。
中学卒業時には不動産業界で生きていくと決心。
-谷口さんはコラビットの中でも不動産業界出身者としてご活躍されているとか。谷口
そうですね、不動産×Techとしてビジネス展開しているのでエンジニアメンバーが多く、私と雄也さんだけが不動産業界出身になりますね。(笑)
谷口
意外ですよね。(笑)
谷口
もともと祖父が不動産事業を営んでいたことと、お金を稼ぎたいという思いが高校の時にはあったので、不動産業界で働こうと決めていました。
ですので、大学進学の時点で不動産に関する学部に行こうと思っていました。
谷口
考えたんですが、スポーツや文化系では無理だろうなと。(笑)
ではビジネスマンとして考えた時になにが良いか?と考えた結果、不動産が一番しっくりきました
谷口
経済学部で「都市経済学」を専攻していました。
谷口
経済学の一つの分野でアメリカが先行している学問なんですが…
例えば鉄道が延伸するといくらぐらいの経済効果があるのかとか、
特定の地域に住まわれているユーザーがETCを導入するといくらぐらいの経済効果があるのかとか、
特定の地域に住まわれているユーザーの通勤時間が1分短縮されると、その地域や土地の資産価値がどれくらい変化があるのかなどを分析する学問なんです。
谷口
当時は金融系の研究室が人気で。マニアックな研究室感がありましたが。笑
大手不動産企業に就職して得たこと
-そこから新卒1社目として野村不動産会社に入社されて。谷口
はい、そうです。
谷口
入社後研修が終わって配属されたのが、開発(用地取得)を担う部門でした。
具体的にはどこの土地をいくらで買うか?をリサーチして交渉をして購入までを担う部門ですね。
アパレルとかでもあると思いますが、いわゆるバイヤー(=仕入れ業務)のような仕事です。
谷口
いえ。(笑)
当時は、「J-REIT」に興味を持っていて先端的な仕組み自体に興味を持っていて。
野村不動産=野村証券のイメージを持っていたので、不動産の証券化は得意ですごい力を入れているんじゃないかと思っていたんです。
蓋を開けてみると不動産の証券化とは違う部署に配属になってましたが(笑)
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多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産などを購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品です。 不動産に投資を行いますが、法律上、投資信託の仲間です。 アメリカで生まれ、「Real Estate Investment Trust」の略でREITと呼ばれています。 これにならい、日本では頭にJAPANの「J」をつけて「J-REIT」と呼ばれています。
*参考:https://www.toushin.or.jp/reit/about/what/
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谷口
配属を知った当初はかなり残念でした!
谷口
いえ、開発部門から住宅の営業部門に異動になりました。
個人のお客様向けにマンションや戸建ての営業をやってました。
マンションギャラリーや見学フェアの企画や仕様を作ったり、住宅情報媒体へ掲載する記事の企画構成を考えたり。
営業部門のあとは新設された企画部門に異動し、新規事業開発業務に携わったり。
谷口
そうですね、いろいろと経験させていただきました。
不動産業界をITという物差しで見た結果、見えてきたこと
-そんな会社をなぜ辞めようと思われたんですか?谷口
新規事業開発や企画業務を担当しているうちに感じたことが大きかったですね。
meetupに参加したりして、広く不動産系のベンチャーやスタートアップとの接点が増えたり、fintechみたいに新しい動きがあったことが大きいです。
私自身はITについては詳しくなかったですが、今後のビジネスにおいて不可欠な存在になるであろうと感じました。
谷口
新規事業開発において、可能性がありそうなものをしても全く通らなかったり。
ふと気づくと働いている時間の5割以上が社内調整や資料作成に費やされていてほとんど創造的な仕事ができていませんでした。
ITや新しいモデル自体がまだまだ浸透していなかったこともありますし、自分の能力が足りなかった部分もあると思いますが…
もっと変化が多く、挑戦できる環境に身を置こうと思い退職することに決めました。
谷口
そうです。
なので、IT企業に転職しようと思っていました。
それも楽天社やGoogle社、Amazon社などのいわゆるメガベンチャーに。
谷口
もともと性格的にも大手思考でしたからね。(笑)
副業で始めた不動産投資。緊張感がある中で磨かれたコアスキル。
-大手思考からベンチャーに転職したのはなぜなんですか?谷口
もともと社会人になってから不動産が好きで副業として不動産投資を始めていたんですよね。
掘り出し物の物件を自分なりの尺度で目利きできるようになるために、特定の地域の物件情報を毎日定点ウォッチしたり、物件情報をもとに事業収支を作ってみたり、「これは!」と思うものは実際購入したりしました。今でも毎年何物件か購入し続けています。
谷口
自分のお金を使ってるわけなので、ものすごい緊張感がありましたし、その分本気で情報を集めるし、結果詳しくなる。
これがある意味、私の中ではベンチャー起業をやることと似ている気がして。
なので、大手IT企業に転職しつつ副業で好きなことをやろうと思っていたんです。
ただ、よくよく考えたときにベンチャー感覚でやっていた副業も一定安定してきていた。
では、ベンチャー企業に入って今まで野村不動産で学んだ知見と副業で磨いた不動産の査定や目利きを生かしていこうと思ったんですよね。
ベンチャー企業の醍醐味は成長実感も日々感じられるし、稼いだ分対価としても入ってくる。
数ある不動産テックの中でコラビットを選んだ理由
-なるほど、逆転の発想ですね。(笑) その中で数ある不動産テック企業の中で、何故コラビットを選ばれたんですか?谷口
コラビットのメンバーの人柄に惹かれたというのが一番でしょうか。
当時は4名でしたが、いい人ばっかりだったんです。笑
あとは代表の浅海さんがエンジニア出身であったというのも大きかったです。
ろいろな不動産テック系の代表の方とお会いしましたが、多くは不動産業界出身者の方でした。
その中で浅海さんは唯一の現役のエンジニアでしたし、浅海さんのエンジニアとしての技術力に魅力を感じ、この会社の技術力と自分の不動産の知見を掛け合わせればいいものが作れそうと漠然と感じさせてくれました。
「不動産脳」をサービスにする?
-技術力=ITという部分も大きかったんですね。 入社後はどんなことをされているんですか?谷口
今はHowMaのコア部分である、不動産価格を算出する査定における推定エンジンを作っています。
谷口
実際は人間の算出アプローチと機械学習によるアプローチは結構違うんですが、かっこよく言うとそうですね。(笑)
もともと、統計学とかも好きだったので感覚的なものを体系化することなどに興味はあったんです。
なので、副業で培ってきた不動産を見る目や視点など活かしてモデル設計し、データサイエンティストやエンジニアメンバーに実装として落とし込んでもらっているイメージですね。
最近は私自身もコードが読めるようになってきたので、IT人材とのコミュニケーションコストはだいぶ下がりました(笑)。
谷口
そうですね。
不動産の情報とITを組み合わせるためにもそうですし、サービスのコア部分を担っているので、不動産情報に関しては相変わらず必ず触れるようにしています。
毎週1日程度は副業(不動産投資や開発)に時間を割く時間を取っています。
もちろん、会社の理解をいただいて。
谷口
不動産情報だけでなく理論も大事にしています。不動産鑑定士試験に合格していることもエンジン開発に大きく役立っています。
谷口
私の知見や知識が会社のプロダクトとして寄与できて、自分の成長と会社の成長がリンクしているのがすごくやりがいに繋がっていると思います。働くことで自分の成長が感じられるのは嬉しいですね。ITベンチャーでは知らないことがいっぱいあって伸びしろばっかりです。
スタートアップで働くということ
-谷口さんが、コラビットに入社されて2年間で手がけられた業務の一覧表をいただきました。 これすごいですね…・不動産データベース保有企業との共同事業
・不動産会社のコンサルティング
・国土交通省補助事業において新たな分析
・新築マンションの推定エンジン開発(特許申請中)
・中古マンション、賃貸、戸建ての推定エンジン開発
谷口
いろいろ関わらせていただきましたね。(笑)
今回のインタビュー用にまとめたんですが、仮に転職せずに大手企業にいたままだと半分以上は実現していなかったでしょうね。
谷口
ベンチャー企業はスピード感が大手とは全く違います。前職で新しい事業や共同事業をやろうとするとアイディアが生まれてから実行の意思決定までに半年はかかりますが、今の会社では1週間もかからない場合がほとんどです。
代表の浅海やCOOの岡崎は「やりたいならやってみて」という感じです。笑
具体的にはお話できないですが、今後の取り組みも含め楽しみにしていてください。
ITという分野はアウトプットが全てであるので、どれだけ多くの時間を投資したとしてもお客様に必要なサービスでないと意味がない。普通の人が3日かかる開発が3時間で終わる場合もあったりするので、「良いアウトプットを出すためにどう働くか」という考え方です。
あとは情報が入ってくるスピードも全然違いますね。
大手にいると内向きの業務も多く、時流やトレンドにどうしても疎くなる。
なので、その状態で新規事業開発をしようと思ってもアイデア自体が古いものになっていて使えなかったりというのはあったと思いますね。
業界通が語る不動産業界の負とは?
-大手もベンチャーも経験されているからこそですね。 谷口さんが感じる「不動産業界の負」ってなんですか?谷口
たくさんあると思いますが、私が感じるのは2つです
・情報が未整備なので、価格(賃料)がわかりづらい
谷口
中古車を見てみると中古相場は気軽に一般の方が知れますし、大きなマーケットとして出来上がって取引が活発に行われていて、市場自体も活性化されている。
中古不動産のマーケットも同じくらいの透明性や明瞭性が出てくるといいなと思います。その中で、コラビットのアプローチとしてはまずは、ユーザーが気軽に「相場を知る」状態を作ろうと。
その相場をテクノロジーを使って誰でもわかりやすく見れる状況にしたいと思っています。
家を売りたいときに○○円になります。
その根拠は…
この根拠を明確にすることが一番重要だと思っているので、ユーザーの方が家を売ったり買ったりする時の意思決定をサポートする存在がHowMaであってほしい。
その状態を作ることが当面の目標ですね。